山口県立病院機構事件(山口地判令2・2・19) 就業規則に「契約5年まで」さかのぼって通算は 更新上限1年で雇止め不可
契約更新する期間は「就業規則の範囲内」で「原則5年以内」と契約書に記載して、翌年に雇止めした事案。平成25年にさかのぼって通算5年までとした就業規則の内容は契約更新後に説明された。山口地裁は、以前から生じていた更新の合理的期待が消滅したと解することはできず雇止め無効とした。面接試験に受かれば更新するとしていたが、評価は合理性を欠くとしている。
継続期待消滅せず 制度周知は契約後
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y法人は、山口県が設置した地方独立行政法人であり、医療の提供、医療に関する調査および研究等の業務を行い、山口県A1医療センター(以下「本件病院」)等を運営している。
Xは、本件病院において、平成17年9月1日から看護師として看護業務に従事していた者であり、平成23年4月以降は、各年度、契約期間を1年間とする労働契約を締結・更新していた。
Y法人においては、平成29年4月の就業規則改正により、平成25年4月1日を起算日とする有期常勤職員の通算雇用期間は、「理事長が特に必要と認めたとき」を除き、原則として5年を超えない範囲内とする旨の更新上限条項が新設された。なお、同年7月から、前記の「理事長が特に認めたとき」の判断に当たって、面接試験と当該職員の勤務状況等の評価を実施し、その結果等を総合的に判断する取扱い(以下「本件雇用継続審査」)を開始した。
平成29年4月、Xは契約更新に当たって、それまでとは異なり契約期間を半年とされたほか、雇用契約書兼労働契約通知書に、就業規則に規定する範囲内で更新する場合があること、更新は原則として5年の範囲内とする等の記載が付加された。
平成29年7月、Xは平成30年4月以降の更新を希望したことにより、本件雇用継続審査の面接試験を受けたが、Y法人は更新基準を充たさないとして、Xに対し、契約更新を平成29年10月1日から平成30年3月31日までとし、以後更新しない旨を記載した労働契約書および労働条件通知書を交付した。
Xは、交付された上記書面に、「私は平成30年4月1日以降の契約が更新されないことについて納得していません」と記載した上で署名押印してY法人に提出し勤務したが、Y法人は、平成30年4月1日以降の契約更新に応じなかった。そこで、Xは本件雇止めの効力を争い、Y法人に対して、労働契約上の地位を有することの確認を求めて提訴した。
判決のポイント
ア 平成29年3月以前は…
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