【人事学望見】第1272回 合意による賃金相殺 労働者の自由な意思がカギ握る

2021.01.14 【労働新聞】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

な、なんの握手ですか?

 労働者の賃金債権の放棄や合意による相殺は、労働者の自由な意思表示に基づく場合と認められる合理的な理由が、客観的に存在していたといえる場合には許される。しかしながら、判例の傾向をみると、黙示の合意の成立については慎重な姿勢をとり、認められにくい。

全額払原則 違反を免れる

 賃金全額払いの原則と合意による相殺が争われたものに日新製鋼事件(最二小判平2・11・26)がある。

事件のあらまし

 AはY社に雇用されている際に、元利均等分割償還、退職した場合には残余金一括払いの約定でY社から借り入れた。その後Aは、いわゆるサラ金に多額の負債を負い、破産申立てをする状態になったため、Y社に対し退職を申し出るとともに、Y社からの借入金の残債務を退職金および給与等によって一括返済する手続きを執るよう依頼しY社はこれを了解した。Y社には、退職金、給与等から一括返済に要する金額を控除して返済に充てる旨を定めた労使協定は締結されておらず、個別同意を得て返済手続きをY社に一任させる取扱いが慣行であったため、Aから退職届を受理するとともに委任状を受けて清算処理を行った。Aは過払い額について異議なく受領した。

 その後Aは破産宣告を受け、破産管財人に選任されたXは委任状等によるAの意思表示は、退職せざるを得ない状況下のものであり完全な自由意思に基づくものではなく全額払いの原則に反する、仮に自由な意思に基づくものであったとしても他の破産債権者を害することを知っていたので否認する等の理由で、Y社に対し退職金、給与等の全額440万円の支払いを求めた。

 一審判決(大阪地裁)は、…

この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら

労働新聞電子版へログイン

労働新聞電子版は労働新聞購読者専用のサービスです。

詳しくは労働新聞・安全スタッフ電子版のご案内をご覧ください。

この連載を見る:
令和3年1月18日第3289号12面 掲載
  • 広告
  • 広告

あわせて読みたい

ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。