【裁判例が語る安全衛生最新事情】第361回 松原興産控訴審事件 パワハラ賠償で素因減額を破棄 大阪高裁平成31年1月31日判決

2021.01.27 【安全スタッフ】
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Ⅰ 事件の概要

 原告Xは、平成21年7月に、アルバイトとして、M社の経営するパチンコ店に勤務し、同年8月に正社員となった。その後、被告Y社がM社を吸収合併した。Y社は、トータルアミューズメント施設(パチンコ、ボーリング、ゲームセンター)の経営を目指す会社であり、本件の店舗の店長はBであった。

 その店舗に、平成24年4月に班長としてAが転入してきたが、その店では、開店後は全員がインカムを装着してA班長が指示などを行うことにしていた。そのA班長のインカム指示は激しい内容であり、注意して注意を受けた者が言い訳をすると、激昂して「帰るか」「しばくぞ」「殺すぞ」という発言をした。

 そのA班長は、激しい言動で、Xら従業員に対して指導・命令を繰り返したので、平成24年10月2日に、Xは、他の従業員5人とともに、B店長に直訴して、A班長を転勤させて欲しいと申し出たが、B店長はパワハラには当たらないとして転勤をさせず、口頭での注意に留めた。Xはこの回答にショックを受けて早退し、平成24年10月6日に病院を受診してうつ病と診断され、自宅療養を指示され、休職期間が3カ月であったので、Y社から復職できないのであれば退職をしてほしいと退職を勧められ、平成25年1月31日に退職した。

 Xは、労働基準監督署に労災申請をし、労基署は、平成25年10月11日にXのうつ病の業務起因性を認め、その後も、少なくとも平成30年1月末までの休業補償給付を支給した。

 原告XはY社に対して、A班長のパワハラは違法な不法行為であり、Y社は使用者責任を負うとして損害賠償請求訴訟を提起したが、一審判決(大阪地裁平成30年5月29日判決、本連載No.360)は、Xの請求を認めたが、Xの素因減額25%を行い、賠償額は572万円と低額であった。

 原告Xと被告Y社ともに控訴した。

Ⅱ 判決の要旨

1、過失相殺・素因減額について

 本件のように、…

執筆:弁護士 外井 浩志

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2021年2月1日第2371号 掲載
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