【裁判例が語る安全衛生最新事情】第362回 甲研究所事件 退職勧奨が安全配慮義務違反に 札幌地裁平成31年3月25日判決
2021.02.10
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
被告Y1会社は、官公庁などからの受託調査研究、業務委託、経営コンサルティングを主な業とする会社である。
原告Xは、大学院修士課程在学中にアルバイトでY1社に勤務した後、大学の修士課程修了後の平成8年4月1日にY1社に正社員として採用され、調査研究部の研究員として業務を行っていた。被告Y2は、Xの上司であり部長である。
Xは、業務が過剰となり、平成18年1月20日にうつ病にり患し、労基署に労災申請をし、平成26年1月31日に業務上疾病として労災の認定を受けた。
Y1社は、Xがうつ病にり患したとして休業し、平成18年11月に復職してから平成26年5月に休職するまでの間、基本給と主任加給を合計額の半分に減額した。また、平成26年6月からは休職となり無給となっている。
Xは、労災認定がなされた後、不当に給料を支払わなかった事実、共済掛金を納付しなかった事実、Y1らが退職を迫った事実があるとしてY1、Y2らに損害賠償請求訴訟を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1、労基署の業務上の判断の妥当性
労働基準監督署長は、Xの主治医の意見書および部会意見書の内容を合わせて検討し、Xの業務上の心理的負荷は総合評価すると「強」となると判断した。
一方でXに発病した精神障害は業務による心理的負荷が主要な原因となって発病したものと認められると判断した。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2021年2月15日第2372号 掲載