【人事学望見】第1277回 就職内定取消異聞 尾を引いたヘッドハンティング
中途採用者は、即戦力状態での募集採用というのが社会常識。内定取消しでは、新卒者ばかりに注目が集まっているが、差し迫った生計維持は、むしろ中途採用者であり、無法な取消しを迫られたらお手上げ状態に陥ってしまう。そんな悲劇がしばしば演じられている。
誠意尽くすも認められず
ヘッドハンティングされたのだから、まさか取消しはなかろうという状況で、企業の勝手な思惑に振り回された事案にインフォミックス事件(東京地決平9・10・31)がある。
事件のあらまし
Aは、X社に勤務していたが、Y社の役員、人事部長等と面接し、マネージャーとして入社するよう強く求められたことから、Yからの採用条件提示書および入社承諾書の送付を受けた。このヘッドハンティングにすっかり舞い上がったAは、Yに入社することを決意し、入社承諾書を送付した後、X社に対し退職届を提出した。
ところが、入社予定日のわずか2週間前になってYから業績予想が大きく下回ったため、経費削減および事業計画の見直しが進んでおり、当初配属を予定していた部署におけるマネージャー業務を行わせることができなくなったとの通知を受けた。併せて入社を辞退するなら相応の償いをするとも提案があった。代替策は①基本給3カ月分の補償による入社辞退②再就職を図るための試用期間中(3カ月)Yに在籍し期間満了後に退職③マネージャーではなくSEとして働く、という条件だった。これについては、裁判所は、円満解決を図ろうとしたことは推認できるが、職種を確定的に変更する意思の条件提示とみることはできないとも判断している。…
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