【人事学望見】第1280回 納得できない人事考課 8年昇格なしは残業逃避にあり
能力主義・業績主義的賃金体系において、賃金決定の前提となる人事考課は恣意的にされない限り使用者に広い裁量が認められている。賃金体系云々に行き届く以前の問題ともいえる「残業非協力」によって昇給・昇進が遅れたのは遺憾とする訴えもある。
貢献度等に多大な格差が
残業に協力する社員と協力しない社員では会社への寄与度・貢献度で極めて大きな差がある。当たり前だと一笑されるような事案が法廷で戦われたのはメディカルシステム研究所事件(東京地判平11・9・21)である。
事件のあらまし
Y社には、職能資格制度が採用され、J級(一般職能3等級まで)、S級(中間指導職能3等級まで)、M級(管理職能5等級まで)があり、大卒入社者は、J3等級に格付けされ、多くは3年在籍でS1等級に昇格するのが標準的な取扱いだった。
Aは、①入社以来勤務時間中にしばしば休憩し、②終業30分前になると新たな作業を行わず、③作業改善などに対する取組みが消極的であり、④収益拡大を目的とする残業増加方針にも従わず、残業を行わなかった。
Aは、入社時にJ3等級1号に格付けされた以降8年間において、号は9号まで昇給したものの、J3等級のままで昇格はなかったことから、入社以来、昇給・昇格において差別されているとし、不法行為に基づく損害賠償請求権によって差別がなければ支払われていたであろう賃金と現実に支払われたところの賃金との差額および職能資格がS2等級5号であることの確認を求め提起した。…
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