【裁判例が語る安全衛生最新事情】第365回 社会福祉法人Y会事件 人格貶める過度の指導に使用者責任 福岡地裁令和元年9月10日判決
Ⅰ 事件の概要
原告X1~X5は、被告Y1法人の元職員であり、すでにY1法人を退職した者たちである。被告Y1は、特別養護老人ホーム、老人デイサービスセンターの経営などを目的とする社会福祉法人であり、被告Y2は、その代表者理事長である。被告Y3は、被告Y2の妻であり、特別養護老人ホームの施設長である。
原告X1らは、①Y1法人に対して、未払割増賃金と遅延損害金、②Y2に対して、労働時間を適切に管理すべき義務違反の不法行為責任と遅延損害金、③Y1法人に対して、付加金請求およびその遅延損害金、④Y1法人に対して、賃金の減額による未払賃金と遅延損害金、⑤Y1法人に対して、退職金請求およびその遅延損害金、⑥Y1法人およびY3に対して、Y3がX1~X5に対して行った数々のパワーハラスメントによる不法行為責任、使用者責任、および遅延損害金の請求を行った。
このように原告X1らは、Y1法人らに対してさまざまな請求をしているが、ここでは、⑥のパワーハラスメントの主張に対する判決の内容を紹介する。
Ⅱ 判決の要旨
1、原告X1に対する行為
Y3は、X1に対し、平成23年ころ、バザー担当になった際に、バザーの売上金を横領したと決めつけたり、施設の米を盗んだと決めつけたりして、同人が退職に至るまで、日常的に、「品がない」「ばか」「泥棒さん」などと発言した。
2、原告X2に対する行為について
Y3は、X2に対し、平成26年ころ、叱責する度に「あなたの子どもはかたわになる」といったり、X2が退職に至るまで、日常的に、「ばか」などと発言した。
3、原告X3に対する行為について
Y3は、X3に対し、平成26年ころ、叱責する度に、「言語障害」などと発言したり、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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