【努力義務化!70歳までの就業確保 新しい高齢者雇用】第15回 能力育成を促進する仕組み(上) 能力の価値で処遇を 専門委員会が等級決定/藤村 博之
職能資格制に2つの欠点
この連載の中で、70歳までの就業継続を実現するには従業員の能力維持が重要であることを強調してきた。今回は、従業員の能力開発のために企業としてどのような仕組みを用意する必要があるのかを考えてみたい。60歳代になっても自らの能力向上に取り組む従業員になってもらうために必要な施策である。
従業員に能力開発の必要性を説いても、全員がそれに反応するとは限らない。人は易きに流れる。娯楽への誘惑に打ち勝って仕事に役立つ勉強をするには、強い意志が必要である。
従業員を能力開発に向かわせる方法の一つとして、ネガティブ・エネルギー(悪い状態から抜け出そうとする力)に働きかけるものがある。その知識を身に着けないと給料が下がるとか、現在の地位を失うとなると、危機感が高まり、真剣に取り組もうという気持ちになるはずである。
企業としては、「こういう良いことが待っている」という面をみせると同時に、企業が必要とする能力を維持できなければこういう悪いことが起こるかもしれないというマイナス面をみせることも必要である。そこで提案したいのが「能力価値等級制度」である。
職務遂行能力を基準とした職能資格制度は、よく考えられた仕組みであったが、2つの決定的な欠陥を持っていた。一つは、一度上がった能力は下がらないとした点であり、他の一つは、能力の価値が変動することを考慮に入れていなかった点である。
能力は、使わなければ落ちていく。典型的な例は外国語である。たとえば、…
筆者:法政大学大学院 イノベーション・ マネジメント研究科 教授 藤村 博之
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