【人事学望見】第1286回 試用期間中の解雇は? 留保解約権行使に濫用法理適用
2021.04.22
【労働新聞】
試用契約の法的性質が、期間の定めのない解約権留保付労働契約と解し得るときは、試用期間の満了をもって自動的に契約が終了するとみることはできず、使用者による本採用拒否の意思表示は、一般的には解雇の意思表示と解されることになる(安枝・西村「労働法」)。
通常よりも広い範囲だが
使用者の解約権行使は、その趣旨にかんがみて「雇い入れ後の解雇のときよりは解雇の自由が認められる」と解されているが、解約権留保の趣旨、目的に照らし、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認される場合にのみ許される(同上)。解雇権濫用法理が適用されることになるようだ。
ニュース証券事件(東京高判平21・9・15)は、裁判例の多い中途採用者の解雇無効が認められた一例である。
事件のあらまし
Y証券会社に期間の定めのない雇用契約によって採用されたAは、6カ月間を試用期間として勤務することとなった。ウエルスマネージメント本部の課長を命じられたが、試用期間終了前に営業社員としての資質に欠けるとして解雇された。
第一審東京地裁は、解雇は客観的合理的な理由がなく、社会通念上相当として是認することができず無効であるとしたが、Aが解雇後他の証券会社に入社したのはYへの復職の意思を放棄したものと認定。その限度で支払い要求(未払い給与・賞与等)を認容したが、地位確認請求を棄却したため、AおよびY双方が控訴した。…
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令和3年5月3日第3303号12面 掲載