【努力義務化!70歳までの就業確保 新しい高齢者雇用】第17回 働き方の可能性を示す 従業員が進路を選択 造船業 安全衛生の知識得て/藤村 博之
従業員と共に考えていく
(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構は、高齢期の従業員が活躍できるように、産業別高齢者雇用推進事業を展開している。毎年、5つ程度の産業を選び、それぞれの業界団体が検討委員会を組織し、2年かけて産業別ガイドラインを策定する。そして、ガイドラインを会員企業に紹介し、高齢者雇用の進展に役立てている。
筆者は、これまで6つの産業の事業にかかわってきた。今回は、それらの中から造船業の事例を紹介する。2008年から09年にかけて実施された事業であり、安全衛生分野での経験を積むことによって、同一企業内だけでなく、協力会社や外部団体の講師としての道が開けることが示された。60歳以降の活躍の場として複数の選択肢があることを従業員に示し、従業員自らが選び取っていくことを促す仕組みをつくった。企業がすべてお膳立てして従業員に提示するのではなく、従業員の思いをくみ取りながら、共に考えていくという点で参考になる試みである。
30万トンタンカーは全長270メートル、世界最大級のコンテナ船は全長400メートルになる。ちょっと想像できないような大きさである。ドックでの作業時間を短縮するために、船体をブロックに分け、鉄板を溶接して各ブロックを作っていく。一つのブロックは数十トンから100トンを超えるものもある。これらのブロックをドックに移動させて組み立てていく。「造船業は重力との戦いだ」と造船技術者が話していた。また、高所作業が多く、危険と隣り合わせである。
造船業では、労働災害事案が多く発生しているため、安全管理の大切さは、強調しても強調し過ぎることはない。それほど重要な仕事であるにもかかわらず、造船所内では、安全衛生部門に異動になると左遷されたような気持ちになるということだった。そのような状態を改善するという目的もあって、造船業での高齢者雇用推進事業が始まった。
外部講師としての活躍も
造船工業会に設置された検討委員会での議論で強調されたのは、…
筆者:法政大学大学院 イノベーション・ マネジメント研究科 教授 藤村 博之
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