【元監督官が明かす!!送検・監督のリスク管理 事例徹底分析】第31回 偽装請負② 直接指揮はしない 委託者から個人事業主へ/西脇 巧
労働者でないと主張し是正せず
今回は、都道府県労働局(以下「労働局」)が偽装請負と認定して指導し、その後、捜査機関(警察)が送検した事例を取り上げたい。偽装請負とは、形式上は業務委託(請負・準委任)契約を締結しているものの、実態は労働者派遣(または労働者供給)となっているものを指す。従業員などからの通報を端緒とし、労働局(需給調整事業関係業務担当)の調査により明らかになる場合が多い。
労働基準関係法令違反が問題となる場合には、労働局と労働基準監督署(以下「労基署」)が連携して調査・指導を実施することもある。もっとも労働局は、職業安定法や労働者派遣法を根拠として調査・指導しているが、労基署のように司法警察権限があるわけではない。このため、労働局では、行政指導しても是正されない場合、企業名を公表し、捜査機関へ刑事告発するといった対応を採る。
事例Ⅰは、形式上、委託者が、受託者に対し業務を委託し、さらに受託者が個人事業主に業務を再委託していたが、実態は、委託者が個人事業主に対し指揮命令をしているとして実態派遣と認定された事案である。労基署が労災かくし(労働者死傷病報告未提出違反)で送検もしている。
事例Ⅰ 労災かくしでも送検されたケース
法人(受託者)の会長および代表取締役は、平成29年1~8月、延べ175日にわたり、厚生労働大臣の許可を受けずに、金属加工会社(委託者)に従業員3人を派遣したもの。労働局は受託者に対し、無許可で労働者派遣をしているとして企業名を公表したが、その後も受託者は「労働者」ではなく個人事業主と主張し続け、是正に応じなかったため、捜査機関に刑事告発した。…
筆者:TMI総合法律事務所 弁護士 西脇 巧
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