【若手社員をやる気にする!退職金・企業年金の再編】最終回 非正規社員 将来見据え議論が必要 中退共の少額掛金活用も/山崎 俊輔
判決は不支給認める
2020年10月13日、正社員に退職金を支給する一方、非正規社員に支給しない扱いが違法といえるかが争点の1つとなっていた、メトロコマース事件の最高裁判決が示された。
二審では少なくとも正社員と同じ基準で算出した退職金額の、25%を受ける権利があるとされ、過去にない判決であったことから、最高裁の判断に注目が集まっていた。しかし、最高裁はこれを認めなかった。
全国の経営者、とくに非正規社員の割合が多い業種の経営者は、ほっと胸をなで下ろしたことだろう。
ただしこれをもって「非正規には退職金が不要と認められた」と考えるのは早計だ。経営者はむしろ、退職金・企業年金制度の改定に当たって「非正規の適用はどうするか」という問題と向かい合う必要がある。
ここ数年、経営者が対応を迫られてきた労働問題のテーマに「同一労働同一賃金問題」がある。正社員と非正規の格差を是正するために法制化されたもので、「賃金」「賞与」「福利厚生」などについて、非正規の差別があってはならない、と定めている。
この法律では、同じ仕事をしているなら同じ賃金や賞与があってしかるべきであって、差を付けるには合理的な理由が求められる。たとえば、正社員のみが利用できる社員食堂は合理的な理由が見出しにくく、このような考え方は許されなくなってきている。
中小企業においても2021年4月から完全施行となっているため、多くの企業はすでに対応が済んでいると思うが、実はこの問題は、「賃金」「賞与」「福利厚生」を見直して終わる話ではない。
なぜなら、厚生労働省の同一労働同一賃金のガイドラインでは、退職金もその検討範囲の一部となり得ることを示唆しているからだ。
先ほど挙げた最高裁判決も、…
筆者:企業年金コンサルタント 山崎 俊輔
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