【裁判例が語る安全衛生最新事情】第371回 Y歯科医院事件 過労とうつ発症、自殺に因果関係 福岡地裁令和元年9月10日判決
Ⅰ 事件の概要
亡Aは、歯科技工士であり、被告Yの経営する歯科医院(以下「Y歯科医院」という)に歯科技工士として、平成元年4月から平成26年4月に自殺するまで歯科技工士として勤務していた。原告X1、X2は亡Aの両親である。
亡Aの業務内容は、Y歯科医院において、主としてYの作成した指示書に従って、インレー、アンレー、ブリッジ、クラウン、テンポラリークラウン、コア(支台)、総義歯、局部床義歯、バー、クラスプ、ステントなどの義歯や補綴物を製作、修理することである。Yから指示を受けた翌日までに完成させるよう求められることもあった。亡Aは、概して、義歯や補綴物を製作する速度が遅く、また、誤りが多かったために製作をやり直すことも多かった。
亡Aの労働時間は相当に長く、さらに、Yから日常的に叱責されており、死亡する1週間前には指示した業務をしていなかったことについて叱責され、死亡する前日、義歯の作成に誤りがあることを指摘され、当該義歯を翌日までに作り上げる必要があったことから、診療時間外に、Y歯科医院に居残って義歯の製作をしていた。
平成26年4月8日午前3時に、亡Aは自殺し、X1らは、所轄労基署長に労災申請をしたところ、業務上災害として認定された。
Ⅱ 判決の要旨
1、亡Aの勤務実態
亡Aは、Y歯科医院に勤務していた間、すべての診療日において、全従業員の中で最初に出勤し、最後に帰宅していたため、YからY歯科医院の鍵を預けられており、診療日においては、亡Aが、…
筆者:弁護士 外井 浩志
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