【人事学望見】第1294回 併存組合下の残業差別 兵糧攻めで体力弱体化を狙った
協定不成立言い訳ならず
ひと昔前の春闘は、交通ストが主役だったが、国鉄民営化以降完全に影を潜めた。争議の主役の座も企業別組合から合同労組(ユニオン)に移り、賃上げ・一時金回答結果を報道するだけになった。企業内には複数組合をめぐる労使トラブルもない。過去を振り返ってみよう。
総評・同盟のナショナルセンターが半ば統合の形で連合が誕生したためか、企業内に複数組合が併存する状況も下火となった。働き方改革が標榜されるなかで日産自動車(残業差別)事件(最三小判昭60・4・23)をみると奇異に感じる。
事件のあらまし
日産とプリンスの合併により組合も併存状態となった。一方の組合に対してのみ残業を命じないことが不当労働行為に当たるかでもめた。
判決の要旨
複数組合併存下にあっては、各組合はそれぞれ独自の存在意義が認められ、固有の団体交渉権および労働協約締結権を保障されているから、その当然の帰結として、使用者はいずれの組合との関係においても誠実に団交を行うべきことが義務付けられている。また、団交の場面に限らず、すべての場面で各組合に対し中立的態度を保持し、その団結権を平等に承認、尊重すべきであり、組合の性格、傾向や従来の運動路線の如何によって差別的取扱いをすることは許されない。
使用者は、併存組合に対し、ほぼ同時期に同一内容の労働条件の提示を行い、それぞれ団交を行った結果、従業員の圧倒的多数を要する組合との間で一定の条件で合意が成立したが、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら