【裁判例が語る安全衛生最新事情】第127回 みずほトラストシステムズ事件 新入社員のうつ病自殺と予見可能性 東京地裁八王子支部平成18年10月30日判決
Ⅰ 事件の概要
原告X1は亡Aの父、原告X2は母である。原告X1は訴訟継続中に死亡し、原告X2と次男である原告X3が相続した。
被告Y社は、コンピュータのシステムおよびプログラムの開発販売等を業としており、亡Aは平成8年3月に大学の理学部数学科を卒業後、同年4月にY社にシステムエンジニアとして採用された。亡Aは、4月1日から5月17日まで新入社員研修を受講し、営業開発第4部に配属されたが、その部署は銀行業務や信託業務に用いるプログラムを作成する部署であり、亡Aが配属されたベストグループは信託業務全般に関するプログラムを維持する部門であった。
亡Aは、他の新人と共に5月20日から6月28日まで部内集合研修を受講した後、日銀与信明細票プログラムを完成させたが、その完成した翌日である平成8年8月15日より体調が悪くなり、起きられない状態となって欠勤した。その後、亡Aは体調が悪いといって食事をとらなくなり、8月29日には勤務時間中に体調を崩し、銀行のセンター内の診療所に行き、感冒性胃腸炎の診断を受けた。
亡Aは、同年9月10日に体調を治すためにY社を退職することを決意したが、退職届をY社には提出せず、9月11日、12日と出社したものの、体調不良であるために上司の指示により、9月13日から23日までに休日を含んで連続の休暇を取得した。そして、9月24日に出勤して、9月30日付で退職することを伝えて了解を得て、9月25日、26日と自席でコンピュータを使用しない業務に従事したが、26日の業務終了後、団地ビルから飛び降りて自殺した。
原告X1とX2が、被告Y社に対して安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求訴訟を提起した。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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