【社労士が教える労災認定の境界線】第104回 再転職した25歳土木工事技術者が現場付近の林道で自殺
災害のあらまし
労働者A(当時25歳)は平成11年4月にX工業大学を卒業後、就職した土木工事会社が同年12月に倒産したため、平成12年4月から現在のB土木工事会社に再転職した。大学で土木工学を学び測量士補、2級土木施工管理技士の資格を取得し、1日も早く土木工事技術者として一本立ちしようと仕事に励むAにB会社はさまざまな仕事を経験させた。
平成13年、北海道中央部にあるD市郊外の灌漑用水路新設JV工事を受注したB会社は、Aの腕を磨く良い機会と思いAほか1人を工事監理業務に派遣した。JVでのB会社の分担は代表会社でなくサブコンであり、労災保険も代表会社の番号だった。
元請けJVは工事監理を行い現場作業は下請会社が行った。Aは灌漑用水路管(60π)敷設工事の工事監理に従事し、4人部屋で飯場生活をしていたが、3カ月後の10月中旬早朝、工事現場付近の林道の立木で首をつり自殺した。事故から2年近く経過後、Aの父親から労災請求を依頼された。
判断
自殺は本人の意志で死亡するのであるから故意とみなされ労災給付はされない。しかし、自殺と業務の間にうつ病が介在した場合、単純ではない。業務に関係した周囲の異常な環境などが原因で精神が異常な状態となり、正確な判断ができなくなり自殺することがある。このような場合は業務上とされる。本件の場合自殺は本人の従事した業務内容、責任の重さ具合、残業時間数、本人および家族の病歴など多方面から調査した結果、業務との因果関係が認められず業務外とされた。
解説
自殺の場合は業務との因果関係がはっきりしない場合が多い。…
執筆:中小企業福祉事業団幹事 北海道労務管理センター
特定社会保険労務士 澁田 勲
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