【社労士が教える労災認定の境界線】第105回 走行車両が砂利をはじき交通誘導する労働者の左目を直撃
災害のあらまし
労働者A(22歳)は警備会社に勤務し建設工事現場の交通誘導作業に従事していた。平成17年12月14日、片側1車線の道道(県道)でB建設会社が舗道剥離作業のため片側を通行止めにし、一般車両を交通規制内(片側交互通行)へ誘導する作業に従事していた。
午後0時15分頃通過した車種とナンバー不明の普通乗用車の通行ではじかれた砂利が飛び、左目瞼部を直撃し負傷した。眼科医の治療を受け痛み、眼球のキズは治癒したが左目が赤く見える後遺症が残った。
判断
「業務起因性」が認められるかどうかが判断の分かれ目であった。眼科医は作業中に左目に小石が当たった打撲による痛みと判断し鎮痛剤を処方、5日後再診した際治癒と診断した。ところが、Aは痛みは取れたが、遠近感がなくなり左目スクリーンが赤く見え不安で業務につけないと訴えた。
眼科医は負傷は治癒している、赤く見える原因の特定はできないとの診断だった。1週間後症状が回復しないのでE市立病院で眼底検査するも異常は認められず、赤く見える原因は特定されなかった。さらにH大学付属病院で受診したが左目が赤く見える原因は不明であった。
また、第3者行為災害の届けのため警察署に交通事故証明を請求したが加害者不詳のため証明書は発行されず念書となった。以上の経過をたどり労働基準監督署で慎重に検討された。災害発生後10カ月経過し労基署は、左目が赤く見えるのは本人の自覚症状のみ、医者が因果関係を認めていない、飛来物も特定できないなどの理由から「業務起因性」を認めず業務外とした。
解説
業務上の災害と認定され労災給付を受けるには…
執筆:中小企業福祉事業団幹事 北海道労務管理センター 特定社会保険労務士 澁田 勲
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