【人事学望見】第1295回 賃金請求権と相当性をみる 使用者の責に帰すべき事由前提
2021.07.01
【労働新聞】
使用者の責任で、労働者が労務の提供ができなくなった場合、労働者は賃金請求権を失わない。労基法26条が定める「使用者の責めに帰すべき事由」があるか否かが大前提だが、労基法の趣旨は休業手当を支払わせることによって、労働者の生活を保護することにある。
就労なしで対償要求可能
有期労働契約の場合、当該期間内に限られるが、雇用継続およびそれに伴う賃金債権の維持の期待性は高く、合理性があると判断されたのはいすゞ自動車事件(宇都宮地裁栃木支決平21・5・12)である。詳しくみてみよう。
事件のあらまし
自動車会社Yとの有期労働契約を締結して栃木工場に勤務していたAら3人が、Yが契約期間満了日までを休業したことについて、民法に定める賃金請求権に基づいて賃金仮払いを請求した。
判決の要旨
使用者が労働者の正当な(労働契約上の債務の本旨に従った)労務の提供の受領を拒否した場合に、その危険負担による反対給付権を免れるためには、受領拒絶に「合理的な理由がある」など正当な事由を主張立証すべきである(労働契約における労働者の賃金請求権は権利の根幹を構成する)。…
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令和3年7月12日第3312号12面 掲載