【裁判例が語る安全衛生最新事情】第130回 山田製作所控訴事件 うつ病自殺と過失相殺 福岡高裁平成19年10月25日判決
2011.06.01
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
被告Y社は、オートバイの部品、自動車部品の製造を主たる業務とする会社で、某大手自動車・オートバイメーカーの部品生産工場として位置づけられている。亡Aは、工場の塗装班で「段取り」と呼ばれる業務を担当しており、平成14年4月1日からリーダーの地位に就き、リーダーとして品質トラブル対策を行っていた。また、新人社員を指導していく立場にもあった。
平成14年3月、某大手自動車・オートバイメーカーは、Y社を含む取引先の不具合撲滅展開の説明会を実施し、市場のクレームを平成15年3月末までに10分の1以下にしようとした。そして、Y社において、検査工程が設置され、従前は合格となっていた品物の多くが不合格となり、その結果、塗装班において従前2%の不良品率が約30%に上昇し、塗装班の残業が増加することとなった。
そのような状況下で亡Aは、平成14年5月14日に自殺した。労働基準監督署長は、本件自殺を業務上と判断し、妻X1に遺族補償年金等を支給した。
亡Aの妻X1と、父X2、母X3が、被告Y社を相手取って損害賠償請求訴訟を提起したが、一審判決(熊本地裁平成19年10月25日判決、前号の本連載第129回参照)は、合計約7430万円の損害賠償義務を認めた。
被告Y社が控訴し、原告X1~X3も附帯控訴して、本件はその控訴審判決である。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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平成23年6月1日第2139号 掲載