【裁判例が語る安全衛生最新事情】第372回 Y食品会社事件 業務量少なさ訴え自殺も責任を否定 札幌地裁令和元年6月19日判決
Ⅰ 事件の概要
亡Aは、精神障害者(うつ病)であり、平成24年11月に被告Y社に就職した。Y社は、牛乳、乳製品、菓子および食品の製・販売を行う会社であり、札幌市白石区内に工場を有し、製造出荷を行っている。
原告X1は亡Aの母親、原告X2は妹であり、父親は、その相続分をすべてX1に譲渡していた。亡Aは、平成18年9月から書店で働いていたが、うつ病を発症してその書店での就労に困難を来した。亡Aは、その書店を平成24年9月に退職して、障害者相談支援事業所に相談し、特定非営利活動法人に転職の相談をし、Jが担当相談員となり、ハローワークを通じて、平成24年11月にY社が障害者雇用枠で工場の事務員として採用した。
亡Aの作業は、朝礼に参加するほか、電話対応、書類全般の処理補助、事務室および給湯室の清掃などであった。上司はCであった。平成25年4月19日に、亡AはCを個室に呼び、仕事が少なくて辛い、このままでは病気を再発してしまいそうである、亡Aを雇用する必要がないのではないかと告げた。Cは、亡Aの雇用が障害者雇用率を達成するためであることを告げ、亡Aはショックを受け当日早退した。
同年4月22日に、JはCに連絡し、亡Aが障害者雇用を達成するためといわれたことがショックであると告げ、Cも、亡Aの業務量を増やすために部署異動を検討している旨を告げた。同月26日、亡Aは、本件工場の装置技術係の事務員の席から生産管理班の席に移り生産管理班の業務も担当することになった。しかしながら、亡Aの健康状態はよくならず、平成25年9月24日、自宅で首をつって自殺した。
原告X1らは、Y社に対して、主位的には使用者責任、予備的には安全配慮義務違反を根拠とし、亡Aの損害賠償請求権をX1が相続したこと、X1、X2は固有の精神的苦痛を受けたという理由で、損害賠償請求訴訟を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1、亡Aに「対する安全配慮義務
亡Aのようにうつ病を発病している者は、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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