【社労士が教える労災認定の境界線】第107回 地震が発生し工場内から屋外へ避難しようとして3人が負傷
2011.06.15
【安全スタッフ】
災害のあらまし
A社は精密機械の製造業を営んでいる会社である。仕事中に突然大きな地震が発生した。工場の建物自体が大きく揺れ、モルタルの壁土が落下し身体に当たったため危険を感じ、避難しようとして作業員Bは地上一階の窓から屋外へ飛び降り、作業員Cは中二階から階下へ飛び降りた際それぞれ足首を負傷した。
また、急ぎ屋外へ出ようとした作業員Dは、ドアを勢いよく空けて突進したところ、揺れの影響により入口の正面に移動してきていたリヤカー車輌に身体ごと正面衝突して転倒、顔面を負傷した。
判断
労災保険における業務災害とは、労働者が事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験則上認められる場合をいい、いわゆる天災地変の場合にはたとえ業務遂行中であっても、一般的には業務遂行性は認められない。しかしながら、被災労働者の業務の性質や内容、作業条件や作業環境あるいは事業場施設の状況などからみて、天災地変に際して災害を被りやすい事情にある場合には、天災地変による危険は同時に業務に伴う危険(または事業主の支配下にあることに伴う危険)としての性質をも帯びていることになるという認定理論から、上記作業員BCD3人の負傷についてはいずれも、業務上と認定した。…
執筆:中小企業福祉事業団幹事 アイエス社労士事務所 所長 伊藤 悟
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平成23年6月15日第2140号 掲載