【裁判例が語る最新安全衛生事情】第152回 H工務店事件 一人親方の被災と元請負人の責任 神戸地裁社支部平成20年7月30日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、一人親方の大工である。被告Yは工務店であるが、個人経営である。Yは、2階建ての戸建て住宅の建築を請け負い、その工事の一部をXに発注した。Xは、一級建築士の資格を有し、30年間大工として働いてきたが、Yからも過去に5回ほど仕事を依頼を受けたことがあった。
Xは本件工事現場で、2階の床部にコンパネ(合板)をはめ込み中、持参したカケヤ(両手打ちの鎚)を当て木に当て損ない、バランスを崩して建物の外側に転落して頚骨脱臼骨折、両手関節内骨骨折などの傷害を負った。XはYに対して安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求訴訟を提起した。
一審判決(神戸地裁社支部平成19年12月11日判決)は、YがXに対して特別な社会的接触関係にあるものとして安全配慮義務を負う関係に立つことは認めたものの、Xが一級建築士の資格を持ってかつては屋号を構えていたこと、独立した大工であり仕事に関しても諾否の自由を有していること、一人親方として自ら労災保険に加入していること、事業収入として納税の手続きをとっていること、労働時間の管理がされていないことなどに照らせば、XY間に雇用関係は認めがたく、Xを独立した個人経営者として評価すべきであると判断した。また、Xの採った作業方法は極めて危険であり、そのような作業方法を採るような予見可能性はないなどとして、Yの責任を否定した。本件はその控訴審である。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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