【裁判例が語る安全衛生最新事情】第153回 札幌国際観光事件 中皮腫罹患での死亡と使用者の責任 札幌高裁平成20年8月29日判決

2012.05.15 【安全スタッフ】
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Ⅰ 事件の概要

 被告Y社はホテルを経営する会社であり、亡Aは、そのホテルで機械室・ボイラー室などでホテルの設備係として、昭和39年から昭和60年まで業務に従事してきたが、平成13年4月頃から体調が悪化し、同年5月に入院して悪性中皮腫との診断を受け、平成14年4月に死亡した。

 亡Aの遺族である妻X1と子X2がY社を相手取って損害賠償請求訴訟を提起したが、一審判決(札幌地裁平成19年3月2日判決、本連載の135回・2011年8月15日号で解説)は、中皮腫との因果関係が認められるのは昭和60年頃までの作業環境であり、それまでの間は、Y社の予見可能性はなかったという理由で請求を棄却した。本件は、その控訴審である。

Ⅱ 判決の要旨

1、亡Aの本件ホテルでの石綿ばく露歴

 亡Aは、昭和39年4月にY社に採用されて以来、①けいそう土保温材の撤去作業、②フランジのパッキン交換作業、③配管バルブのハンドル内部のパッキン交換作業、④ボイラーの機械の外側部分の石綿取扱い作業、⑤天井裏での作業において石綿を吸入する可能性の高い作業に従事していたことが認められ、⑥作業中に限らず石綿の吹き付けられた壁面との接触などにより石綿が飛散し、これを吸収する可能性のあったことも認められる。…

執筆:弁護士 外井 浩志

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平成24年5月15日第2162号 掲載
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