【裁判例が語る安全衛生最新事情】第374回 甲研究所事件 うつ病で安全配慮義務違反認めず 札幌高裁令和元年12月19日判決
Ⅰ 事件の概要
被告Y1会社は、官公庁などからの受託調査研究、業務委託、経営コンサルティングを主な業とする会社である。
原告Xは、大学院修士課程在学中にアルバイトでY1社に勤務した後、大学の修士課程修了後の平成8年4月1日にY1社に正社員として採用され、調査研究部の研究員として業務を行っていた。被告Y2は、Xの上司であり部長である。Xは、業務が過剰となり、平成18年1月20日にうつ病に罹患し、労基署に労災申請をして、平成26年1月31日に業務上疾病として労災の認定を受けた。
Y1社は、Xがうつ病にり患したとして休業扱いにし、平成18年11月に復職してから平成26年5月に休職するまでの間、基本給と主任加給を合計額の半分に減額した。また、平成26年6月からは休職となり無給となっている。
Xは、労災認定がなされた後、不当に給料を支払わなかった事実、共済掛金を納付しなかった事実、Y1社らが退職を迫った事実があるとしてY1社、Y2らに損害賠償請求訴訟を提起し、一審判決(札幌地裁平成31年3月25日判決、本連載362回)は、Xのうつ病につき業務が原因であることを認めて、Xの勤務日数、勤務時間の減少した結果仕事量が減り昇給が遅れたこと、休職から復職した際に給与の基本給と主任加給が半額とされたこと、共済掛金を未納にしたこと、Y2が不当に退職勧奨したことを理由に不法行為責任を認めて、Y1社に約3473万円、Y2に33万円の賠償を命じた。
Y1社、Y2が控訴したのが本件である。
Ⅱ 判決の要旨
1、Xの長時間労働とY1社の予見可能性
Y1社が発症前3カ月間におけるXの労働時間が長時間に及んでいることを把握しつつ、その業務負担について、格別、軽減の措置を採っていない一方、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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