【裁判例が語る安全衛生最新事情】第154回 西日本じん肺訴訟事件 じん肺と損害賠償請求権の時効 福岡地裁平成19 年8月1日判決
2012.06.01
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
本件は九州地区に存在した炭鉱で就労してじん肺症に罹患したと主張する元従業員またはその遺族らが、炭鉱を経営していた被告Y1社と被告国に対して損害賠償請求をしたという事件である。
Y1社に対しては、雇用者として坑内作業場における適切な粉じん対策を講じるなどして従業員がじん肺に罹患しまたは増悪させることがないよう安全を配慮すべき義務があるのに、この義務に違反したと主張した。また、被告国に対しては、じん肺の発生またはその増悪を防止するために鉱山保安法に基づく規制権限を行使することを怠ったことが違法であるとして、国賠法1条1項に基づき損害賠償を求めた。
被告会社は、訴提起当時は6社であったが、5社は本判決前に和解しており、被告Y1社のみが残されていた。Y1社は安全配慮義務違反の責任を全面的に争った。他方で被告国は、規制権限の不行使の違法を争わず、除斥期間が経過していることのみを争っている。
Ⅱ 判決の要旨
1、被告Y1の責任
Y1社は、他の炭鉱経営会社と同様、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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平成24年6月1日第2163号 掲載