【裁判例が語る安全衛生最新事情】第155回 西日本じん肺事件 賠償責任と他の粉じん職歴との関係 福岡高裁平成20年3月17日判決
2012.06.15
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
本件は九州地区に存在した炭鉱で就労してじん肺症に罹患したと主張する元従業員、またはその遺族らが、炭鉱を経営していた被告Y1社に対して損害賠償請求をしたという事件である。
原告X1らは、Y1社に対しては、雇用者として坑内作業場における適切な粉じん対策を講じるなどして従業員がじん肺に罹患し、または増悪させることがないよう安全を配慮すべき義務があるのに、その義務に違反したと主張した。一審(福岡地裁平成19年8月1日判決、本連載No.154)は、Y1の安全配慮義務違反を認めた。
被告会社は、訴提起当時は6社であったが、5社は一審判決前に和解しており、被告Y1社のみが残されていた。また、被告国は控訴後の控訴審において和解した。その結果、被告はY1社のみとなった。
Y1社は安全配慮義務違反の責任を全面的に争ったが、一審判決は、消滅時効や除斥期間の起算点を管理2、管理3、管理4のそれぞれの認定時期、法定合併症もそれぞれの認定時期から起算するとした。
本件はその控訴審である。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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平成24年6月15日第2164号 掲載