【裁判例が語る安全衛生最新事情】第134回 ミヤショウプロダクツ事件 シックハウス症候群への損害賠償 大阪地裁平成18年5月15日判決
Ⅰ 事件の概要
被告Y社は日用品雑貨の販売などを行う会社であり、原告Xは、その従業員であった者である。原告Xは、平成11年3月にY社に入社したが、平成12年5月に、Y社は、改装工事を施した新社屋に移転したところ、移転後の建物内で、Xは吐き気、頭痛、かゆみ、のどの痛み、発熱などの症状を訴えるようになった。平成12年6月6日に耳鼻咽喉科の診断を受けたところ、スギ花粉症、アレルギー性鼻炎、急性扁桃炎の診断を受けた。
その後、Xの咳はひどくなって呼吸困難な状態となり、微熱が続き、全身倦怠感もあり、悪化したので、7月20日頃、他の耳鼻咽喉科に見てもらったところ、F医師より、アレルギー症状であり、シックハウス症候群の可能性があることを指摘された。そして、XはY社にその診断書を提出して1週間自宅で療養した。その間、F医師からY社にXの症状の説明と社内空気清浄が必要であることが電話で伝えられた。8月7日に症状が軽快したので出社したが、気分が悪くなり咳や鼻血などが出たので仕事に支障を生じて8月11日に再び欠勤した。
原告Xは、平成12年12月に労災保険の請求をして、しばらく経過後に、労基署の方で、事業所のホルムアルデヒドの測定をしたところ、基準値に近い値が出て、化学物質過敏症などの診断が出たこともあり、平成17年10月12日に、労基署長は業務上障害として12等級の症状を残して固定したと判断した。原告Xは、被告Y社に対して安全配慮義務違反による損害賠償請求訴訟を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1、原告Xの化学物質過敏症の罹患
Xの症状の経過からすると、Xは化学物質過敏症に罹患した可能性が高いといえる。すなわち、Xは、平成12年5月22日に新社屋に移転した直後から吐き気や頭痛、鼻やのどの違和感などの症状を感じ、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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