【裁判例が語る安全衛生最新事情】第157回 岩瀬プレス工業事件 中国残留孤児の被災と過失割合 東京地裁平成20年11月13日判決
2012.07.15
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、中国残留孤児で中国で生まれて日本に帰国し、日本国籍を取得した。Xは被告Y社に勤務して、その工場内でプレス作業に従事した。Y社では、Aがプレス作業主任者として選任されていたが、事故当時は工場におらず、Xの指示はプレス作業主任者の資格がないBが行っていた。
Xは、事故当日、プレス機械の操作は知っており、光線式安全装置が備え付けられていたが、金型を載せる四角の台(以下、「ヨウカン」という)を取り替えた後、光線式安全装置の取り付け位置をヨウカンの高さに合わせて下げないままプレス作業を開始したために、その光線式安全装置が作動せず右手指先を挟まれ、右手示指、中指の各中手指節間関節以上を欠損した。そして、労働基準監督署長により、その障害は後遺障害等級6級に認定された。
Xは、障害の治癒後にY社に復帰したがすぐに退職し、その後、Y社に補償を求め、これでいっさい責任を問わないとして示談し金70万円を受領したが、その後、Yに対して安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求訴訟を提起した。
Ⅱ 判決の要旨
1、被告Y社の安全配慮義務違反
事業者は安全衛生法、同規則などにより、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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平成24年7月15日第2166号 掲載