【裁判例が語る安全衛生最新事情】第136回 英光電設事件 既往歴のあった腰痛発症への損害賠償 大阪地裁平成19年7月26日判決
Ⅰ 事件の概要
被告Y1社は、電気設備工事の請負を業とする会社である。
原告Xは、高校3年時に従兄弟の引越しを手伝って腰に違和感を覚え治療を受けたところ、腰椎椎間板ヘルニアの診断がなされたが、一旦は治ゆしていた。Xは、高校在学中に電気工事士の資格を取得して、Y1社に入社したが、その既往症があったことは告げなかった。Xは、建物屋上の電気室で、入社後8カ月経過時に、先輩であるY2と共に作業に従事していたが、動力制御盤を取り付けようとして腰を痛めたが、医師の診断は、「急性腰痛症、腰部椎間板変形症、腰部椎間板ヘルニアになりかけ」であった。
その後、約11カ月休業したうえでXは職場に復帰したが、体調が悪いことを理由に遅刻したこと、他の社員と平等に業務の分担をしないこと、早く帰宅し残業をしないことなどから同僚と不仲になり、口論となることもあった。
Y1社は、協調性がないということなどを理由に、Xを解雇した。
本件は、解雇の無効を争うとともに、労災事故による腰部椎間板ヘルニアなどの傷害について損害賠償を求めものである。
Ⅱ 判決の要旨
1、Xの腰痛と本件事故の因果関係
Xは、平成15年12月5日、現場で、動力制御盤を取り付ける作業に従事していた際、寸切りに掛けていた制御盤が外れ、Xが1人でこれを支える格好となり、制御盤の荷重がXの腰にかかり、腰を痛め、本件発症を引き起こしたことが認められる。
原告Xは、本件事故前から腰椎椎間板ヘルニアの症状(本件既往症)を有し、治療を受けていたことが認められる。
しかし、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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