【裁判例が語る安全衛生最新事情】第161回 ファーストリテイリング(ユニクロ店舗)事件 外傷後ストレス障害への損害賠償 名古屋地裁平成18年9月29日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、被告Y1社に勤務して衣類品の販売店舗の店長代行として勤務していたが、店長である被告Y2とは折り合いがよくなかった。
Xは、平成10年11月17日に従業員間の連絡事項を記載する店舗運営日誌に、「店長へ」として、Y2の仕事上の不備を指摘する記載をして、「どういうことですか。反省して下さい」と付け加えた。同日Y2は、Xを休憩室へ呼び出し、説明を求めて激高し、Xの胸ぐらを掴み、Xの背部を板壁に3回ほど打ち付けた。Xが謝罪を求めたところ、Y2はさらにXの顔面に1度頭突きをした。そして、Y2は「まだ話は終わっていない」と言いながら、Xの首を両手で掴み、板壁に頭背部を1回打ち付けた。
その後、Xは救急車で病院に搬送され、頭部外傷、髄液鼻漏疑との診断により経過観察のために入院した。平成10年11月18日にはXは母親に付き添われて退院したが、ずっと職場復帰をしないままであったので、Y1社は診断書の提出を求めたところ、Xは平成11年5月10日に、「神経症」として1カ月間の休養加療を要するとした診断書を提出した。
Y1社は、その診断書では事件と疾病の関係が不明であるとして、Xに出社のうえでの説明を求めたが、その店舗勤務を6月10日付けで解くので社宅を明け渡して欲しい旨の通知をしたところ、Xは蕁麻疹を呈して救急車で病院に搬送された。そして、Xは病院の診断を受けて、「外傷後ストレス障害(神経症)」と診断され、Y1社にその診断書を送付した。
その後もXはY1社に復職しなかったが、平成13年7月30日、労災保険の手続きなどのためにY1社の担当者Cと電話で連絡をとったが、その時、CはXに対して「いいかげんにせいよ、お前。オー、何を考えとるんか、こりゃあ。ぶち殺そうか、お前」などと発言したために、Xはその電話の直後に気分が悪くなり、嘔吐して、母に付き添われて救急車で病院に入院した。
Xは、Y1社、Y2に対し、暴行を受けるとともに、労災申請手続きなどにおいて不当な取扱いを受けた結果、外傷後ストレス障害(PTSD)に罹患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた。
Ⅱ 判決の要旨
1、店長Y2の責任
Y2は、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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