【人事学望見】第1301回 36協定と残業命令 就規の事由に該当なら義務あり
使用者が法定労働時間を超えて時間外労働を業務命令として命ずるには、就業規則上の定めおよび時間外労働に関する労使協定(36協定)の締結と所轄労基署への届出を要する。ただ36協定は使用者の刑事上の免責を有するだけで直接労働者に課されるものではない。
懲戒解雇を正当と認める
手抜き作業が発覚し、残業してやり直しをするように命じられたがこれを無視した。36協定の代表的判例として知られる日立製作所武蔵工場事件(最一小判平3・11・28)がそれだ。
事件のあらまし
Aは、Y社Z工場でトランジスターの品質および歩留まりの向上を所管する製造部低周波製作課特性管理係に所属していた。上司であるB主任は、トランジスター製造の歩留まりが生じたため、Aに残業して原因を究明し、その推定値を算出し直すよう命じたが、Aはこの残業命令に従わなかった。翌日Aは作業したが、Y社はこの残業拒否を理由に出勤停止14日間の懲戒処分を言い渡し、始末書の提出も求めた。
Aが始末書を提出しなかったことから、2度にわたって争いが生じ、警備員に付き添われてようやく退場するという小競り合いを演じていた。その後も挑発的な発言をしたりするようになり、Y社は過去4回の処分歴と相まって就業規則所定の懲戒事由「しばしば懲戒、戒告を受けたにもかかわらず、なお、悔悟の見込みがないとき」に該当するとしてAを懲戒解雇に付した。これに対し、Aは懲戒解雇の無効を主張して提訴した。
第一審は、36協定で定める時間外労働事由は具体性に欠けるから残業命令は無効であり、懲戒解雇も無効とし、第二審は、これとは逆に残業命令、懲戒解雇ともに有効としたため、Aが上告した。
判決の要旨
本件36協定は、時間外労働を命ずるについて、…
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