【裁判例が語る安全衛生最新事情】第163回 ヤマトロジスティクス事件 知的障害者の自殺と予見可能性 東京地裁平成20年9月30日判決
2012.10.15
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
亡Aは貨物自動車運送業を営む被告Y社に勤務していたが、知的障害を伴う自閉症であった。亡Aは、Y社の作業場で商品の梱包の荷造り作業をしており、作業リーダーであったBらは、亡Aが知的障害であることを理解して、亡Aに簡単な作業を割り当て、亡Aが孤立しないように食事時には同僚が一緒に飲食するなどの配慮をしていた。
ところが、Y社も赤字経営となり、人事労務面の見直しが必要になり、その職場に他の知的障害者が採用になって、その者との均衡上、亡Aの時給を850円から840円に下げ、さらに勤務時間を1時間短くされることになった。その結果、亡Aの収入は月額1万7000円程度の減額になり、亡Aは自分の収入で生活を維持して、家の住宅ローンを支払っていくことができなくなると思い、給料のよい職場への転職も考えるようになったが、その後、自宅の寝室で首を吊って自殺した。
亡Aの母親である原告Xは、被告Y社の安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求を提起した。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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平成24年10月15日第2172号 掲載