【裁判例が語る安全衛生最新事情】第164回 三菱重工業長崎造船所じん肺事件 損害賠償額と消滅時効の起算点 福岡高裁平成21年2月9日判決
2012.11.01
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
本件は、被告Y社の経営する造船所やその下請け、孫請会社などで働いていた元従業員X1ら36人(遺族らを含めると60人)の原告らが、粉じん作業によりじん肺症に罹患したとして、安全配慮義務違反を理由に、被告Y社に対して総額13億7000万円の損害賠償請求をした事案である。
一審判決(長崎地裁平成19年7月31日判決)は、原告X1らの請求を概ね認めて(原告らの3人の請求を棄却)、Y社に対して、総額約5億6400万円の賠償を認めた。本件はその控訴審判決であるが、賠償額と消滅時効の起算点が争点となった。
Ⅱ 判決の要旨
1、損害賠償額
X1らの損害額については、じん肺法の管理区分を損害賠償額の重要な指標とするのが相当である。
そして、じん肺の基本的な病像、特に線維増殖性変化に伴う病変は進行性、不可逆性変化に伴う病変は進行性、不可逆性のものであって、それが重篤化して死に至る転帰をたどる場合もあること、その精神的・肉体的苦痛の大きさに鑑みると、溶接工肺に関する指摘を踏まえても、X1らの損害額は、その管理区分に応じて、次のとおり評価すべきである。…
執筆:弁護士 外井 浩志
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平成24年11月1日第2173号 掲載