【トップ&キーマンいんたびゅう】建設業界での「一人KY」定着を熱望
安全担当者にとって死亡災害ほどこたえるものはない。が、不慮の事故を痛ましい“教訓”と受け止めて生かすか否かは人により差違がある。大崎建設㈱の草野壽郎さんの場合は、死傷災害の発生状況をつぶさに検証するなかで、「一人KYこそヒューマンエラー防止に最適」と確信するに至った。現場での徹底実践を経た今、自主・自力によるKYが業界のスタンダードとして定着していくことを熱望している。
――草野さんが一人KYに注目されたそもそものきっかけは何だったのでしょう。やはり、災害の発生ですか?
草野 そうですね。もう30数年も前の話になりますが、私の担当していた現場で、片付け清掃作業をしていた作業員が15m墜落するという死亡事故が起こりました。床に置いてあったベニヤ板を片付けようとしたときの事故だったんですが、実はそのベニヤ板は、小さな開口部の蓋だったのです。ただ、その蓋には「開口部注意」の表示もなければ滑り止めもなく、周辺に何枚かあった普通の板のうちの1枚にしか見えなかった。
その蓋を作業員が残材と勘違いして持ち上げ、一歩前へ踏み出したとき、小さな穴に吸い込まれるように墜落しました。後で私も穴を覗いてみましたが、「怖い」と感じたのを鮮明に覚えています。
事故の発生要因を調べてみますと、何人かのヒューマンエラーの重なりが明らかになりました。まず、被災者本人の大きなエラーは、ベニヤ板を残材・ゴミと思い込んでしまったことと、まさか穴はないだろうという思い込みです。また、開口部に蓋をした作業員にも大きなエラーがあって、穴が危ないと思ったのまではいいとしても、その先を予測せず安易に近くにあった板をかぶせ、「恐い」と感じさせる状態を隠してしまったのです。…
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