【裁判例が語る安全衛生最新事情】第167回 富国生命外事件 うつ病重篤化での退職と予見可能性 鳥取地裁米子支部平成21年10月21日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、被告Y1社(生保会社)に勤務して米子営業所に勤務している女性マネージャー(営業班の班長)である。被告Y2はY1社の鳥取支社長であり、被告Y3は米子営業所長である。支社長Y2は、毎月2回ないし4回米子支店を訪問していた。Y1社を退社したAが、勤務中にY1社のグループ保険に加入していたが、退職時にコンバーション(グループ保険の加入者が、その時点の健康状態にもかかわらず、退職後もグループ保険の金額の範囲内で個人保険に移行できること)を申し出たところ、Y3がその手続きを怠って1カ月の期間内の手続きをしなかったので、個人保険への移行ができず、Xが担当となってAと折衝し、医療保険をセットとした生命保険契約を新規に締結したが、その3カ月後にAが死亡したので、告知義務違反の問題が発生し、Xが亡Aの妻に保険金の支払いについては調査に時間がかかる、保険金の支払いは難しいかもしれないなどと話をした。そのため、亡Aの妻は、Y1社の社長に手紙を出し、Y2を非難する記載をした。その手紙を知らされたY2は、顧客に伝える範囲を超えたマネージャーの言動を指導教育せよと言われたので、Y3らに対し、Xがどの程度関与しているのかを調査し、顧客を混乱させないように指導せよと指示をした。そのため、Y3は、Xを会議室に呼び出し、20分以上叱責した。
さらに、Y2は、Xが班長となっているX班(班員12人)の成績が伸びていないために、班員5人を分離してB班としたが、その結果、Xの班は12人から7人となり、Xの収入も減額となった。しかし、X班の成績は低迷していたので、Y2は、米子営業所のマネージャー会議において、X班の成績が悪いことを指摘し、Xとの個別面談では、業績が悪い、職員を養成していない、マネージャーをいつ降りてもらっても構わないと言い、さらに、Y2はその後の朝礼時でも、X班の成績について叱責し、その後も会議室で叱責した。
その後、Xはストレス性うつ病となり、有給休暇、欠勤となり、休職し、自動退職となった。
Xは、被告Y2、被告Y3らから逆恨みによる嫌がらせを受けたとして不法行為に基づき、被告Y1社に対しては、使用者責任による損害賠償請求訴訟を提起した。…
執筆:弁護士 外井 浩志
この記事の全文は、安全スタッフの定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら