【裁判例が語る安全衛生最新事情】第376回 陸上自衛隊員訓練死事件 補償認めるも安全配慮義務違反否定 旭川地裁令和2年3月13日判決
2021.09.10
【安全スタッフ】
Ⅰ 事件の概要
亡Aは、陸上自衛隊員であり、平成23年1月8日に、陸上自衛隊N演習場で行われたスキー機動訓練の参加の後、急性心筋梗塞により死亡した。原告Xはその妻であり、他の遺族と遺産分割協議で亡Aの請求権を単独相続することになった。被告Yは国である。
亡Aは、その日に、午前8時30分駐屯地を出発してN演習場に到着し、午前9時には本件スキー機動訓練を開始し、午前10時ごろには訓練を終了した。ところが、午前10時30分ごろ、同僚に胸の痛みを訴え、病院に搬送されて入院治療を受けることになった。その4日後、急性心筋梗塞により死亡した。訓練当日の気温は、午前9時にはマイナス10.7度、午前10時にはマイナス9.7度であった。亡Aには、動脈硬化病変が一定程度あり、死因の心筋梗塞は、冠動脈のプラークが破綻したことが原因であるとされた。
Yは、亡Aの死を公務外として国家公務員災害補償法による遺族給付の対象としなかった。Xは、国の不支給の措置を取消して遺族給付を支払うとともに、国に対して亡Aの死亡したことについて安全配慮義務違反による損害賠償請求を行った。
Ⅱ 判決の要旨
1、亡Aの死亡の公務起因性
亡Aについては、冠動脈硬化症の病変があったこと、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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2021年9月15日第2386号 掲載