【人事学望見】第1303回 退職金・減額と没収 非違行為と功労抹消のバランス
2021.09.09
【労働新聞】
退職金は、賃金の後払い的性格、功労報償的性格、生活保障的性格など多面的な働きを持っている。ただ、中心的な勤続基準だけでなく労働者の責めによって減額・没収されるケースも多く、一般的に「賃金の後払い的性格」が変形したり、取締役会の決定で決まる場面もある。
7割減額も相当性認める
私生活上の非違行為で懲戒解雇は免れたものの、退職金を実に7割も減額されるというダメージを受けた元社員の訴えが争われたNTT東日本事件(東京高判平24・9・28)をみよう。
事件のあらまし
Aは、女子高生に対して強制わいせつを行おうとして逮捕され、懲役3年および5年間の保護観察処分付き判決を受けたが、Y社とAとの間で雇用契約の合意解約が成立している。
Aは、睡眠障害やうつ病により社内基準で「指導区分(療養)」とされ、その後年休や病気休暇を取得した後、病気の回復に努めることを前提に賃金を減額されることなく短時間勤務に就いていた。非違行為は業務終了後のことで、逮捕された時点でテレビニュースでも放映され、インターネットにも配信されたが、被害者とは示談が成立している。
Aはその後辞職届を提出し、Yとの間で合意解約となったものの、Yは、Aに対し、就業規則で定める退職金(1375万円)を支払わなかったことから争いとなった。…
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令和3年9月13日第3320号12面 掲載