【多角的に考える両立支援の実践――改正育介法対応】第12回 短時間勤務者の評価 量的目標のみ配慮を 能力面はフルタイム同様/小寺 美帆
二重の不利益は違法に
「時短なので、当然低い評価」「時短は、昇進対象外」と思ってはいないだろうか。育児のための短時間勤務制度の利用を理由として、「減給をし、または賞与などにおいて不利益な算定を行うこと」、「昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと」は、法律で禁止されている(育介法第23条の2、育介法指針第2の11(2)チ・リ)。
ここで禁止されている「不利益な評価」とはどのようなものか。たとえば、平均以下の評価だと「不利益な評価」に当たるのだろうか。
参考になるのが、「社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会事件」(東京地判平成27・10・2)である。同会は、成績評価に応じた定期昇給を行っていたが、時短社員(所定労働時間8時間のところ6時間勤務)は、評価に応じた昇給幅(8分の6)としていた(たとえば、C評価で本来4号俸上がる場合、4×6/8=3号俸の昇給とするなど)。
会社は、「原告ら(看護師など)の職務から考えて臨床経験により能力やキャリアの上がり方が違うはずで、そうすると就労時間が短いことを評価に反映させることに相応の理由がある」と反論した。裁判所は、そういったことが仮にあるとしても、個別にそれに応じた業績評価をするのが本筋であると述べ、このような取扱いは、労働時間が短いことによる基本給の減給のほかに、本来与えられるべき昇給の利益を不十分にしか与えないという形態による不利益取扱いであるとし、育介法第23条の2に反するとしている。
同判例からは、「時短なので当然低い評価」「時短は昇進対象外」などといった、一律の処理や、短縮された時間に応じた基本給の減給のほかに二重の不利益を与えることが、「不利益な評価」として違法とされることが分かる。こうした評価が、時短社員のモチベーションを失わせることはいうまでもない。
では、時短社員をどのように評価すれば良いのか。…
筆者:大江橋法律事務所 弁護士 小寺 美帆
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