【人事学望見】第1305回 基本判例◇就業規則の変更 個人的利害より全体的改善重視
2021.09.24
【労働新聞】
就業規則の作成は、労基法(89条)によって常時10人以上を使用する使用者に義務付けられている。最高裁は、就業規則の条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由としてその適用を拒むことは許されないと判示した。
定年制改変で年収4割減
就業規則変更の合理性判断に関して第四銀行事件(最二小判平9・2・28)では、7つの考慮要素を示している。
それは、①就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、②使用者側の変更の必要性の内容・程度、③変更後の就業規則の内容自体の相当性、④代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、⑤労組との交渉経緯、⑥他の労組または従業員の反応、⑦同種事項に関するわが国社会の一般的状況――である。
事件のあらまし
Aは、昭和28年4月に入行し、平成元年11月4日をもって60歳定年退職したが、Y銀行と労組との間では、昭和58年3月30日に、定年を55歳から60歳に延長する代わりに給与等の減額等を内容とする労働協約を締結していたため、Aの55歳以後の年間賃金は54歳時の6割台に減額となり、従来の55歳から58歳までの賃金総額が新定年制下での55歳から60歳までの賃金総額と同程度になった。…
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令和3年9月27日第3322号12面 掲載