【裁判例が語る安全衛生最新事情】第378回 伊万里市グリーンツーリズム推進協議会事件 川遊び中の溺死で注意義務違反 佐賀地裁令和元年12月20日判決
Ⅰ 事件の概要
被告Y協議会は、農山漁村における滞在型の余暇活動を通して農産漁村の活性化を図り、都市と地域住民の共生の構造を構築することを目的として官民共同で設立された権利能力なき社団である。補助参加人であるB市は、C倶楽部とともに、平成21年3月に他の団体とともにY協議会を立ち上げた。
亡Aは、平成22年7月24日から1泊2日で催された農村チャレンジキャンプに参加したが、川遊びの際に溺死した。
この農村チャレンジキャンプは、参加児童が小学校3年生から6年生までの22人(男17人、女5人)であり、亡Aは妹Bとともにこのキャンプに参加しており、Y協議会は、それぞれの保護者との間で参加児童に対する委託契約を締結していた。
本キャンプには、B市の職員のうちの、Y協議会の事務局長であるDと、そのほか4人が同行していた。また、C倶楽部の関係者6人も同行していた。
初日の平成22年7月24日の午後3時30分から川遊びが行われたが、午後4時には亡Aが溺水状態で発見された。救急搬送されたものの3日後に低酸素性脳症で死亡した。原告X1は亡Aの父、原告X2は亡Aの母である。
X1らは、Y協議会の使用者責任または安全配慮義務違反を理由に損害賠償請求訴訟を提起した。なお、B市は、Y協議会を立ち上げた立場の支援者であり、Y協議会の資産がないときにはB市も責任が追求される可能性があるとして、Y協議会の補助参加人として訴訟に参加した。
Ⅱ 判決の要旨
1、事務局長Dの注意義務違反
本件キャンプにおいて…
執筆:弁護士 外井 浩志
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