【人事学望見】第1309回 裁量労働制の対象範囲 グレーな業務にもムリヤリ適用
厚生労働省では、専門の検討会を設置して、裁量労働制を中心に労働時間制度の見直し作業を進めている。平成30年成立の「働き方改革法」では、時間外労働の上限規制の強化をはじめとして、画期的な制度改正が実施されたが、裁量労働は積み残しとなっていた。
対象人材の範囲狭すぎる
国会に提出された「働き方改革法案(労基法に関する部分)」には、元々、裁量労働制の改正案も含まれていた。対象業務の拡大、手続きの簡素化等をめざしていたが、審議の途中で調査データの不備が発覚し、法案から削除されるという一幕があった。
裁量労働制など「労働時間の弾力化」を図る仕組みは、従業員の裁量範囲を広げることで、効率的な働き方を実現するのが趣旨だ。世間一般の受け止め方としては、「弾力化により、当然、総労働時間の短縮が図られている」と考えられていた。しかし、それを裏付けるデータの信頼性が崩れたのだから、法整備が「仕切り直し」となったのは、やむを得ないところだろう。
厚労省は、その後、「実態を把握しなおして、議論を再開する」という方針の下、再調査に着手した。約3年の時間をかけ、調査結果がまとまったのを受け、検討会での審議に移ったものだ。
裁量労働制については先進的な働き方というイメージがある一方、「要件や手続きが複雑であるせいか、利用は低調」という指摘がなされている(菅野和夫「労働法」など)。
対象者の要件については、専門業務型・企画業務型ともに、具体的な業務を列挙する形となっている。範囲の拡大(業務の追加)が続けられているが、企業側のニーズを満たすに至っていない。
「フレックスタイムのように、労使が話合いで対象業務を決められる形にしてほしい」。
そういった要望も多く聞かれる。
法に見合った制度整備をせず、「やみくもに」裁量労働制を導入し、裁判で争った例をみていこう。…
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