【裁判例で読み解く!!企業の安全配慮義務】第9回 健康状態の把握 管理を怠るとリスクに 「個人情報」は理由ならず/家永 勲
萎縮のし過ぎは危険
労働安全衛生法第66条は、事業主に対して、雇入れ時と1年以内ごとの健康診断を受診させる義務を定めている。これらの規定に掲げられた事項に関する健康診断のことは、法定健診と呼ばれ、掲げられていない事項についての健康診断は法定外健診などと呼ばれる。
健康診断結果の取扱いについては、病歴などのプライバシーにもかかわるため、会社としても慎重な取扱いが必要と感じている企業がほとんどであろう。個人情報保護委員会においても、「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」として、健康情報に特化したガイドラインが策定されている。そのなかでは、労働安全衛生法に基づく健康診断結果や、労働者から任意に提出された健康診断結果(法定外健診に関する健康診断結果はこちらに該当する)などは、「健康情報」であり、個人情報保護法第2条第3項に定める「要配慮個人情報」に該当するとされている。そのため、取得するためには、原則として、本人の同意が必要とされる。
たとえば、HIVへの感染を理由とした内定取消しの違法性が争われた裁判例(札幌地裁令和元年9月17日判決)では、「HIVに感染しているという情報は、極めて秘密性が高く、その取扱いには極めて慎重な配慮が必要である…そうすると、…応募者に対しHIV感染の有無を確認することですら…特段の事情のない限り、許されない」とされており、情報によっては質問すること自体が控えられるべきとすら考えられている。
健康情報が、要配慮個人情報に該当することから、その取扱いに萎縮してしまい、…
筆者:弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲
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