【人事学望見】第1314回 給与の銀行口座振込 将来はデジタル払も視野に入れ
今や昔の話だが、人事部門の大事な仕事に給与の袋詰めがあった。給与の支払日になると、担当者が従業員の給与袋に現金を詰めていく。収入が多い人は「給与袋が立つ(札束が分厚いので)」等の表現も使われたが、若い人は知らないだろう。
安心なのはやはり現ナマ
その後、給与の支払いは、銀行振込が主流になっていく。最近では、国が旗を振って、キャッシュレス化の推進を推し進めている。厚生労働省では、「賃金のデジタル払い」を可能にする方向で議論が進められている。キャッシュレス決済になじんだ世代の場合、「現金でもらっても、ねぇ」という感覚かもしれない。
現金と預金の違いについて、「銀行の倒産」等のいささか時代錯誤的な説明はさておき、現実的な問題として「銀行の営業日」には注意が必要だろう。たとえば、毎月25日払いと決められていて、支払日当日が銀行の休日という場合、当日に引き出せない場合もある。「支払日が銀行の休日に当たるときは、直後の営業日を支払日とする」等の規定を定める必要が生じてくる。しかし、銀行サービスの拡充により、この問題は解決の方向にある。
それはともかく、法律的にはどうなっているか、改めて整理しておこう。
労基法では、「通貨払いの原則」を定めている。ここでいう通貨とは、「日本国において強制通用力ある貨幣および日本銀行券」を意味する。しかし、「確実な支払方法で厚生労働省令(労基則第7条の2)で定めるものによる」ときは例外が認められている。賃金の口座振込等については、基本的に本人の同意が条件となるが、労使協定を締結するように指導がなされている。
なお、対象となる口座については、証券総合口座(マネー・リザーブ・ファンド)を追加するなど、利用者の便宜等にも配慮した改正が実施されている。
口座振込は、会社側にとっても、多額の現金の取扱いを回避できるなど、メリットが大きい。それが当たり前という社会認識が強まると、…
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