【裁判例で読み解く!!企業の安全配慮義務】第11回 過失相殺 基礎疾患の有無を加味 メンタルは不申告前提に/家永 勲

2021.12.09 【労働新聞】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

事業主の責任が限定

 安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求においては、事業主に安全配慮義務および過失がある場合には、被害者となった労働者への賠償義務が認められることになる。しかしながら、被害者となった労働者にも不注意などがあれば、過失相殺の規定が類推適用されることにより、事業主が負担すべき賠償責任の範囲が限定される場合がある。この点は、たとえば、建設現場などにおいて、事業主が装着を指示していたにもかかわらず、自らの判断で保護具などを装着することなく業務を遂行した結果、事故によるケガの程度が拡大したような場合などを想定すれば、そのことは容易に理解できるであろう。

 安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任の原因は、脳・心疾患や精神疾患にまで及んでいる。これらの疾患は現場における不注意のみならず、疾患が競合した結果、損害(この場合は疾病による死亡など)を生じさせることがある。労働者に基礎疾患と呼ばれるような、たとえば高血圧や糖尿病などを抱えていたケースがそれに当たり、このような場合にも過失相殺(民法722条2項)を類推適用して事業主の賠償責任が限定されることがある。

 NTT東日本事件(最高裁平成20年3月27日判決)がこれらの過失相殺の類推適用に関する内容について判断しており、「被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した場合において、当該疾患の態様、程度等に照らし、加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは、裁判所は、損害賠償の額を定めるに当たり、民法722条2項の規定を類推適用して、被害者の疾患をしんしゃくすることができる」とし、「このことは、労災事故による損害賠償請求の場合においても、基本的に同様である」としている。…

筆者:弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲

この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら

労働新聞電子版へログイン

労働新聞電子版は労働新聞購読者専用のサービスです。

詳しくは労働新聞・安全スタッフ電子版のご案内をご覧ください。

令和3年12月20日第3333号13面 掲載
  • 広告
  • 広告

あわせて読みたい

ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。