【裁判例が語る安全衛生最新事情】第384回 マツヤデンキ事件② 労災認定も安全配慮義務違反認めず 大阪高裁令和2年11月13日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、平成21年8月に、電化製品の販売などを営むY1社に入社した。そしてY1の店舗で、店長Y2の指揮命令下で家電販売や商品管理業務に従事していたが、平成25年7月に主治医からうつ病および不眠症との診断を受け、現在まで休職中である。
Xは、平成26年9月に、西脇労働基準監督署長から、うつ病・不眠症の原因は、Y1社の従業員からの勤務中における暴行が原因であるとして労災申請をし、同労基署長は、暴行による心的外傷後ストレス障害(PTSD)を認めて療養補償・休業補償の支給決定を下した。
Xは、Y1社に対しては、安全配慮義務違反、店長Y2、他の従業員Y3~Y5に対しては暴行などによる不法行為により損害を受けたとして提訴したが、大阪地裁(平成30年12月14日判決(第387回)で紹介)は、Y1に対して約金591万円、Y4に対してはY1と連帯して約1万円、Y5に対してはY1と連帯して約金38万円を支払えと一部請求認容の判決をした。しかしながら、Y2、Y3らの加害行為は認めず、Xの請求を棄却した。
Y1社、Y4、Y5は控訴し、さらにY1社はXの従業員たる地位の不存在確認を反訴として追加提訴した。Xは、一審判決で棄却された部分について附帯控訴した。本件は、その控訴審判決である。
Ⅱ 判決の要旨
1、被告Y4、Y5の暴行について
(1)Y4がXに商品券を探すように指示した際、Xの右前腕部、後頭部および左腰部を殴打したことが認められる。
(2)Y5は、勤続年数がXより約15年長いが、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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