【トラブル回避型 解雇、退職勧奨の手法】第2回 退職届が出された場合 承諾の意思示し記録を 労働者による撤回防止へ/延増 拓郎
2022.01.20
【労働新聞】
「辞職」か「合意退職」か
(1)問題の所在
労働者が退職届を提出した後に撤回し、退職の効力を巡って係争となる例がある。このようなトラブルは回避すべきであるが、とくに問題社員から退職届が提出されたような場合には、使用者としては注意する必要性がさらに高まる。
日本では、解雇権濫用法理が確立されている。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、解雇は無効となる(労働契約法16条)。このことにより、使用者は、たとえ解雇事由が存在する場合でも、解雇をしてしまうと係争に発展し、解雇が無効とされるリスクがある。
そこで、実務上は、できるだけ解雇は避け、退職届の提出を受けることにより円満な解決をすることが重要である。
ところが、問題社員が退職届を提出したにもかかわらず自ら撤回した場合には、円満な解決の機会を失うことになる。使用者は、そのような事態とならないよう対応する必要がある。
(2)退職届の提出の法的性質
退職届の撤回が認められるか否かを判断するため、退職届の提出が、法律上、辞職の意思表示または合意退職の申込みのいずれと解されるかが問題となる。
辞職とは、…
筆者:石嵜・山中総合法律事務所 代表弁護士 延増 拓郎
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令和4年1月24日第3337号11面 掲載