【裁判例が語る安全衛生最新事情】第386回 海外需要開拓支援機構外事件 セクハラで環境配慮義務違反認めず 東京地裁令和2年3月3日判決
Ⅰ 事件の概要
原告Xは、Y2社に有期契約で雇用されていた派遣社員であり、Y1機構に派遣されて経費などの精算、入出金処理、経理資料の作成の経理業務、文書作成、電話対応、出張の手配、来客対応などの業務を行っていた。
Y1機構の執行役員であった被告Y3は平成27年7月27日、歓送迎会の後、駅のホームでXに対して執拗に肩に手を回して、電車内で何度も手を握ろうとした。また、平成28年7月22日、Y1機構の専務取締役であった被告Y4は、Y1機構の懇親会の席で、Xなどを含む女性従業員などに対し、「当たり!!ワインディナーwith監査役(交換不可)」などと書いたくじ10枚を引かせた。Xは、平成28年7月、Y1機構の社外ホットライン窓口に通報して社外弁護士に本件懇親会、本件くじ引きについて、セクハラではないかと相談した。
また、Xは、平成29年6月12日までに、労働組合を結成し、Y1機構の株主である16もの企業の担当者に労働組合結成を通告した。被告Y1機構は、平成29年10月13日に、Xの情報漏洩などの就業規則に反する行為などを理由にY2社に対してXの交代を求めた。また、Y1機構は、Y2社に対し、平成29年10月25日、本件労働者派遣契約を更新せず、Xの同年11月1日以降の出社を認めない旨の通知をした。
Y2社は、平成29年11月24日、Xに対して、本件労働契約を11月30日で終了する旨の申入れをして、11月30日の期間満了をもってXの労働契約は終了した。
裁判では、Y3のセクハラ行為、Y4のくじ引き行為の違法性、Y1機構の就業環境配慮義務、整備義務違反、Y2社の就業環境配慮義務、整備義務違反、Y1機構の派遣契約の打ち切りの不当労働行為該当性、派遣労働契約の不更新の違法性が争われた。
Ⅱ 判決の要旨
1、被告Y3のセクハラ行為
駅のホームでの出来事は、Xの供述通り、Y3がXが手を払って拒否したのに、Xの肩に手を回そうとして、Xの肩に複数回触れたものと認められる。
なお、電車内でY3がXの手を握ったことをうかがわせるやり取りはなく、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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