【高まるリスクに対処!新時代の労働時間管理】第5回 出社後や出張中の移動時間 通勤と同視できるか 集合や返信の指示慎重に/岸田 鑑彦

2022.02.10 【労働新聞】
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車中では業務させない

 引き続き実務上、労働基準法上の労働時間か否か判断に迷う時間について取り上げる。

 たとえば本社勤務の従業員が、他県にある支店の会議に出席するため、本来の所定始業時間よりも前に自宅を出て3時間かけて支店に出張したとする。この移動時間は労働時間だろうか。

 そもそも労働者の労務提供義務は、持参債務と解され、雇用契約や業務命令に基づいて会社が指示する場所で労務提供できるようにすることは従業員側に求められる。したがって、その日に会社が求める就業場所(他県の支店)への移動は、通勤と同様に解し労働時間ではない。要するにその日の業務がまだ始まっていないということである。通達(昭33・2・13基発90号)でも、出張のための休日の移動について、移動中における物品の監視等別段の指示がある場合のほかは休日労働として取り扱わなくても差し支えないとしている。

 一方で、物品の運搬それ自体が出張の目的である場合やツアー参加者の引率業務のサポートなど移動そのものに業務性がある場合や、移動中の業務が義務付けられている場合には労働時間と解される(東京地判平24・7・27参照)。

 したがって、出張のための移動時間は、…

筆者:杜若経営法律事務所 弁護士 岸田 鑑彦

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令和4年2月14日第3340号6面 掲載
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