【人事学望見】第1322回 人事考課の大量観察方式 組合員だから評価が低いと主張
統計学は、複雑な数式が用いられるため、素人には取っつきにくい学問だ。しかし、正規分布のグラフをみれば分かるとおり、大量のデータを集めれば、一定の法則性がみえてくる。人事労務管理の分野には縁がなさそうだが、類似の手法が用いられるケースもある。
平均すれば差は一目瞭然
人事考課は、昇進・昇格・昇給等の土台となるもので、評価の良し悪しで処遇面には天と地の差が生じる。しかし、会社にとって「価値の高い従業員」であるか否かは、会社が判断する。そういう意味で、使用者側に大きな裁量権が認められている。つまり、世間一般の基準からみれば実力のある従業員でも、「経営者ににらまれれば」、意図的に低いランクに位置付けられるという事態も起こり得る。
個々の従業員ではなく、特定の労働組合に属する集団が、差別的取扱いの対象となることもある。こうした場合は、不当労働行為に該当し、労働組合法の規制を受ける可能性がある。
不当労働行為の1類型として、「労働者が労働組合の組合員であること…の故を以て不利益な取扱いをすること」が挙げられている(労組法7条1号)。減給、定期昇給の停止、賞与の減額等は、この不利益取扱いに該当する。しかし、そのベースとなる人事考課について、「組合員であるが故の差別」があったと証明するのは、それほど簡単な話ではない。なにしろ、人間の「心の内奥」に属する事柄だ。
「わが社の人事制度が100%完璧なものだとはいわない。結果に一部、不公正にみえる部分もあるだろう。しかし、組合員を差別するようなつもりは全くなかったことだけは、誓ってもいい」などど“いい抜け”する経営者もいるだろう。そこで登場するのが、いわゆる「大量観察方式」だ。典型例とされる判例(紅屋商事事件=最二小判昭61・1・24)により、その基本的な考え方を学ぼう。…
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