【裁判例が語る安全衛生最新事情】第388回 山崎工業事件 労災原因作った従業員の解雇を有効 静岡地裁沼津支部令和2年2月25日判決
Ⅰ 事件の概要
本件は、労災事故と解雇事件の関連した事件である。
原告Xは、被告Y社の工場で働いていたが、就労中に大型の鋳物製品の上でエアブロー(洗浄)作業をしていたところ、その後方から走行していたクレーンのフックがXの左肩の背部に当たり、その製品から落下して負傷した(第1事故)。
その後、Y社の従業員Aが、Y社の鋳造工場で勤務してウォールコラム(幅約50cm、高さ1mの製品)の上に乗っかって、しゃがんだ姿勢でグライダーを用いて研削作業をしていたところ、Xは、その作業方法がおかしいと考えて、そのグラインダーの砥石が回転中であったにもかかわらず、Aの右横から近づいて身体に接触したため、Aが驚いてそのグラインダーを落としてしまう事故が発生した(第2事故)。
Y社は、第2事故のXの行動は危険な行為であり、Xに注意し、Xは渋々始末書を提出した。Y社は、Xに対して、1週間の自宅待機を命じるとともにその間の給料は無給とした。
ところが、Xはその処分に納得がいかずに、その措置に抵抗し、処分の終了後も自分に非はない、Y社は自分の言い分を信じず目撃者であるクレーン運転手の言い分のみを信じており、懲戒処分は無効であると吹聴し、率直に、反省しなかった。そのため、Y社は、真に命に関わる危険な行為を行っていながら、反省せずにそのことを吹聴していたことをもって解雇にしており、その解雇の効果が争われた。
Ⅱ 判決の要旨
1、第1事故
第1事故については、Y社がクレーンを用いて作業を行うときには、クレーンについて一定の合図を定め、…
執筆:弁護士 外井 浩志
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